遺言書を発見!どうしたら良いですか?

遺言書4

 父の遺言書を預かっていたり、部屋のクローゼットの中で遺言書を発見したときは、どのように対処すればよいのでしょうか。

 そのような場合は、家庭裁判所に対して検認の申し立てを行い、遺言書そのものを家庭裁判所に提出しなければなりません。

検認とは

 検認とは、相続人に対し遺言の存在及びその内容を知らせるとともに、遺言書の形状、加除訂正の状態、日付、署名など、検認の日現在における遺言書の内容を明確にして、遺言書の偽造や捏造を防止するための手続きのことです。

 遺言書が効力を発揮するのは、遺言者が死亡したときなので、遺言書自体の内容について問題となるときには、その遺言書を書いた本人はすでにこの世にいません。

 したがって、遺言書の真意を確認し遺言書の偽造や捏造を防ぐために、民法では厳格な要件を定めています。その一つが検認という手続きであり、遺言書の状況を裁判所が検証し、証拠として保全するものです。

 ただし、検認手続きは遺言書の状況を検証するものに過ぎないので、遺言内容の真否等その効力を判断するものではありません。

検認の定め

 公正証書遺言以外の方式による遺言の場合、すなわち、自筆証書遺言(法務局で保管される自筆証書遺言を除く)または秘密証書遺言である場合は、遺言書の保管者またはこれを発見した相続人は、遺言者の死亡を知った後、遅滞なく遺言書を家庭裁判所に提出して、その検認を請求しなければなりません。

 また、封印のある遺言書は、家庭裁判所で相続人等の立ち合いの上、開封しなければなりません。<参考>民法第1004条

検認を受けなかった場合

 遺言書を家庭裁判所に提出することを怠ったり、検認を経ないで遺言を執行したり、家庭裁判所外で封印のある遺言書を開封した者は、5万円以下の過料に処される可能性があります。<参照>民法第1005条

 また、遺言保管者が故意に遺言書を隠匿していた場合には、相続欠格者として相続権を失うことになります。よって、公正証書遺言以外の遺言書が発見された場合は、速やかに検認の申し立てを行いましょう。

検認手続きの流れ

❶遺言書を保管していた人、または遺言書を見つけた相続人が申立人となり、遺言者の最後の住所地の家庭裁判所に検認の申し立てを行います(遺言書1通につき収入印紙800円および連絡用の郵便切手が必要です)。
                     
❷家庭裁判所から申立人、およびすべての相続人に対して検認の期日の通知が届けられます。

❸検認の期日に、申立人および相続人立ち合いのもとで、家庭裁判所で遺言書が開封されます。なお、申立人は必ず出席し、相続人は各自の判断で出欠席を決めます。

❹家庭裁判所は、遺言の形状(遺言書がどのような用紙に何枚書かれていたか、封はされていたかなど)、遺言書の加除訂正の状態、遺言書に書かれた日付、署名、印など遺言の内容がどうなっていたかについて確認し、この結果を検認調書ににまとめます。

 以上で検認は終了します。このあと、申立人または相続人等は家庭裁判所に検認済証明書の発行を申請します(遺言書1通につき収入印紙150円と申立人の印鑑が必要です)。これを金融機関や法務局に提示して遺言執行をします。

 ※検認の手続きが完了するには、家庭裁判所に検認の申し立てをしてから1ヶ月程度を要します。戸籍謄本の収集等の申し立ての準備を含めると、行動を起こしてから2ヶ月程度かかるでしょう。

検認の意義と具体的手続き

過去の判例
❒遺言書の検認は、遺言書の偽造や変造を防止し、その保存を確実にするための一種の検証手続きである。したがって、検認の実質は、遺言書の形式様態等の方式に関する事実を調査し、遺言書の現状を確定する証拠保全のための手続きに過ぎず、実質的に遺言の内容、効力の有無等、実態法上の効果を判断するものではない。

❒検認が一種の証拠保全手続きであることから、検認手続きを経た遺言書でも、後の訴訟で無効と判断されることもある。

❒検認が一種の証拠保全手続きであることから、検認より遺言の有効性が推認されることにはならない。遺言書が真正に成立したと推定されるわけでもない。

❒遺言の検認には、即時抗告が認められず、相続人その他の利害関係人は不服を申し立てることが出来ない。

❒遺言の提出、保管義務、開封義務に違反しても、遺言自体の効力に影響を与えることはない。また、開封・検認義務を負担する者が罰則の適用を受けたからといって、提出・保管・開封などの義務を免責されることにはならない。

まとめ

 自筆証書遺言および秘密証書遺言については、家庭裁判所への検認申し立てが必要です。ただし、自筆証書遺言の場合であっても、法務局に預かってもらう制度(遺言書保管所)を利用していれば、検認は不要です。

 遺言書の検認が必要な理由は、不動産の名義変更、金融機関における預貯金の払い戻し、預金口座名義の変更、株式の名義変更のような相続手続きを行う際に必要になってくるからです。

 もし、自宅や貸金庫などで自筆証書遺言や秘密証書遺言を見つけたら、早めに家庭裁判所へ検認の申し立てを行いましょう。分からないことや不安に思う場合は、専門家に相談してみてください。